コロナ融資の返済本格化と金利上昇局面への突入
2020年から始まった新型コロナウイルス関連の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」は、多くの企業の倒産を防ぐ大きな役割を果たしました。しかし、2026年現在、それらの猶予期間が終了し、「返済のピーク」を迎えています。
さらに、長らく続いた低金利政策からの転換により、借入金利の上昇が中小企業の収益を圧迫し始めています。今、経営者に求められているのは「いかに借りるか」よりも、「いかに借入をコントロールし、収益力を高めて返済していくか」という視点です。
当社は中小企業診断士として、多くの経営改善計画策定に携わってまいりましたが、現在の環境下で企業が維持すべき「借入の限界ライン」について改めて整理します。
借入限度額の基本:債務償還年数で考える
借入金の返済原資は、原則として以下の計算式で導き出されるキャッシュフローです。
返済原資 = 税引後当期利益 + 減価償却費
この原資で「何年かけて現在の借入金を全額返済できるか」を示すのが債務償還年数です。
例えば、毎年の税引後当期利益が1,000万円、減価償却費が500万円、返済期間10年であれば、
(1,000万円+500万円)×10年=1億5,000万円
が借入限度額の目安となります。
「売上高の何ヶ月分」という簡易目安の落とし穴
一般的に、借入限度額の目安は「売上高の3ヶ月分〜半年分」と言われます。
売上高3億円の企業なら、9,000万円〜1億5,000万円程度です。
しかし、2026年現在の経営環境では、この指標だけを信じるのは危険です。
- 原材料・エネルギー価格の高騰: 売上が増えても利益率が低下していれば、返済能力は落ちている。
- 人件費の上昇: 賃上げ対応による固定費増加により、キャッシュが残りにくい構造になっている。
利益率が低い、あるいは利益変動が激しい業種の場合、売上ベースではなく前述の「キャッシュフローベース」でのシミュレーションが不可欠です。
ポストコロナにおける「持っておくべき資金」の考え方
コロナ禍を経て、多くの経営者が「手元資金の重要性」を痛感しました。不測の事態に備え、借入をあえて増やしてでも月商の3〜6ヶ月分の現預金を確保しておく戦略(厚みの確保)は、現在も有効と考えます。
ただし、金利上昇局面では、「借りて寝かせておくコスト」が発生します。
- 金利負担のチェック: 支払利息が事業利益(営業利益+受取利息・配当金)をどの程度圧迫しているか(インタレスト・カバレッジ・レシオ)を確認する。
- 攻めの借入か、守りの借入か: 運転資金の単なる補填ではなく、DXや省力化投資など、将来の利益(返済原資)を生むための借入であれば、一時的に目安を超えても許容するか否か(経営判断が求められます)。
売掛金が入金したらすぐに口座に資金を戻す、「資産売却」「役員報酬他経費削減」などとセットで資金調達するなど、細心の注意が求められます。
デットファイナンスから「稼ぐ力」の再構築へ
かつてはソフトバンクのような積極的なデットファイナンス(借入による拡大)が注目されましたが、金利上昇などの影響を受け、その難易度は格段に上がりました。
借りたお金は、未来の自分たちへの「投資」です。借りた資金でどのように自社の付加価値を高めていくか。
事業計画をしっかりと練って、想定される経営リスクと向き合いながら、キャッシュフローの将来計画を明確化して、経営に望んでいく必要があります。
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